ブラジルの脳神経外科医が説く「日本語の重要性」
2018.04.20 up
「オ・セレブロ・ジャポネース-ア・インポルタンシア・ダ・リンガ・ジャポネーザ」(日本語訳『日本人の脳と日本語の重要性』)
「日本語の重要性」という、日本に暮らす人でもあまり意識しないテーマを扱った一冊の本がブラジルで再出版されました。その記念会が4月12日、サンパウロ市内のサンパウロ文学アカデミーで開催されました。
ポルトガル語でのタイトルは「オ・セレブロ・ジャポネース-ア・インポルタンシア・ダ・リンガ・ジャポネーザ」(日本語訳『日本人の脳と日本語の重要性』)、二カ国語で著されています。著者はブラジルの第一線で活躍する脳神経外科医であり、神学や宗教史の研究家、そして厳選された40名しか終身会員になれないサンパウロ文学アカデミーの会員の1人ラウール・マリーノ・ジュニオル氏(81歳)です。
再出版記念会のサイン会場
「サッポロビールはおいしいですね!」
とにこやかに思い出話に花を咲かせられるマリーノ氏。若いころより空手を通じて日本文化に親しみ、大の親日家です。日本で一番好きな場所は、これまで12回脳神経外科学会を通じて訪日し、最も日本の脳神経外科医の友人たちと親交を深められた札幌と言います。
マリーノ氏が日本人の脳に興味を持ったのは30年以上前にさかのぼります。1972年に初めて日本を訪ねた時、最も不思議に思ったことの一つは、原爆を投下された広島と長崎がきれいに再建されていたことであり、同時に日本の文化や文明、芸術、武術を通して、「日本人の脳」にその秘密があるのではないかと、その特性について非常に関心を持ちました。そうして知己を得た東京大学の角田忠信教授が、「どうして日本人の脳は、他国の人々と大きく異なるのか」ということを研究されていたことに触発され、ブラジル人について研究することに興味を持ったと言います。
再出版記念会で話されるマリーノ氏
ブラジル人と日本人では行動パターンが180度違うようなこともあります。マリーノ氏は日本人とポルトガル語という西洋言語を使用するブラジル人の一般的な違いの特性として、日本人は漢字というイメージで捉えられる言語も学ぶ事により、直感で物事を捉える脳である右脳が西洋人よりも発達しやすいと言います。そのため、よりスピリチュアルであり、宗教的でもあり、規則などもよく守りやすくなるとも言えるのではないかと言います。
ブラジルには多くの日本人とその子孫である日系人が暮らし、ブラジル人や西洋人との異なりを感じながら暮らすことも多いものです。時には、異文化へのフラストレーションが爆発する事さえあります。そういう状況にあって、冷静に学習してきた言語が脳の発達に違いを生んできたのだと知れば、日頃の異文化間の葛藤も冷静に見られるという、その様なことを教えてくれる一冊になっています。
初版は1989年に出版され、ベストセラーになった同書。その内容は、今、日系人の子孫や日本語を学習する人が読んでも決して色あせていない内容だという事で、サンパウロ日系文学作家アカデミーが日本語の希少性やその重要性を広く知ってもらえる良書ということで、マリーノ氏の協力を得て再版されることになりました。今回は特別インタビューが別冊に付き、脳と合わせて神学的側面からも興味深い話が語られています。
再出版記念会でサインするマリーノ氏
再出版記念会での鏡割り
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