ブラジル

ブラジル:サンパウロ

日下野 良武(くさかの よしたけ)

◎職業;ジャーナリスト、ブラジル文化研究家
◎居住都市;サンパウロ市(ブラジル国)

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住めば都

2018.03.28 up

貧しい人も金持ちも、カーニバルでは我を忘れて日頃の憂さを晴らす

貧しい人も金持ちも、カーニバルでは我を忘れて日頃の憂さを晴らす

 「住めば都」という言葉がある。「どんな所でも、住み慣れたらそれなりに良く感じられるようになる」の意味だ。ブラジル最大の都市サンパウロ市に定住して36年になるが、この地を離れる気持ちは毛頭ない。なぜだろう。


 日本訪問のたびに悪友らが「治安が悪いそうだが、そんな国によく住んでいるな」とからかう。ブラジル駐在のテレビ・新聞特派員が送るニュースだけで判断しているからか。
 日本と比べれば確かに悪い。年間の全国殺人件数は2万人を超える。都会のビル壁面の落書き、道路は継ぎはぎだらけ。交通道徳も、無理な追い越しや急な車線変更など枚挙にいとまがない。交通事故死者数は約3万人。歴史の新しい国では教育制度が未熟の上、貧富の差が激しく、地域格差などが共通の問題だ。


 しかし、それでもその国に愛着を持つ人は、生活の中で他に良い点を見いだしているからだと思う。世界の民族で構成されたブラジルでは生理的人種差別は見当たらず、カーニバル期間中は我を忘れて踊りまくり、日頃の憂さを晴らす。相互に人間として認め合いながら暮らしている。また、過激な宗教の対立がなく、政治的なテロも起こらない。国土が日本の23倍と広く、肉類、野菜など食料が安価で豊富。年中温暖な気候のため、マンゴーやパパイアなど果物も多種多様。自然災害も少ない。


 一方、ブラジル人の日本感はどうか。日本語を勉強し始めて3年、ソーニア・アラメイダさん(22)=会社員=は「日本に興味がある。礼儀正しく時間を守る国民。でも、住むことになったら地震や津波、火山爆発、台風などが怖い」と話す。この印象も、東京からブラジルへの偏った報道によるものだろう。


 「住めば都」の類似格言はブラジルにもある。ポルトガル語を日本語に直訳すると、「小鳥にとっては自分の巣が一番良い」。言い得て妙である。


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タグ:サンパウロ

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