ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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2月7日に貼り出された、あるサンパウロ州立高校の入試結果リスト

2月7日に貼り出された、あるサンパウロ州立高校の入試結果リスト

 ブラジルの学校の新学期は、1月下旬から2月までに始まります。受験の必要な高校や大学は、大抵、前年11月から12月ごろに入試が実施されます。

 今年、サンパウロの2018年度前期入学の高校で、年明けに遅れて行われた入試が、一部のサンパウロ州立高校(通称Etec)でした。1月21日に実施され、2月6日に合格発表があり、翌日から入学申し込みの手続きが行われました。

 入学手続きを行う事務所の前には、「テストの点数順に並んだ合格者の氏名」「生年月日と年齢」「公立校か私立校のどちらの出身か」「点数」の表記されたリストが貼り出されていました。

 ブラジルで受験が必要な高校や大学の入試の特徴の一つが、出身校が公立学校の場合、テストの成績で優遇されるということです。他にも、黒人であることや家庭の経済状況などによっても、日頃の成績の結果に何パーセントか加点される学校もあります。

 例えば、受験が必要な一部のサンパウロ州立高校の場合、公立学校出身の生徒には、テスト結果に10%が加点されます。

 ちなみに、一般的なサンパウロ州立高校は、中学卒業者であれば誰でも申し込みするだけで入学できます。いずれも学費は税金で賄われ、授業料無料です。また私立学校の子どもたちは引き続き私立学校の高校へ通い続けるケースも多くなっています。


40人のうち数人を除いて私立校出身者が多数を占めるサンパウロ州立高校の一つの入試結果。右から2番目の列が公立学校か私立学校を示す。SIMが公立校出身

40人のうち数人を除いて私立校出身者が多数を占めるサンパウロ州立高校の一つの入試結果。右から2番目の列が公立学校か私立学校を示す。SIMが公立校出身

 私立校の生徒だけでなく、家庭の経済力が弱いと一般に認識される公立校出身の生徒にも開かれているように思われる受験システム。しかし、実際に貼り出されたブラジル国内でも優良(有名大学への進学率や就職率が高いなどを基準)とされているサンパウロ州立高校の一つエテッキ・デ・サンパウロ(Etec de São Paulo)の合格者リストを見ると、ある一クラス40人の枠に受かった公立校の生徒は5人だけでした。他のクラスも似たような傾向を示していました。

 ブラジルは私立と公立の初等教育機関で学ぶ子どもたちの学力に大きな差があると言われます。この結果だけを見ると、やはり公立と私立の初等教育機関では学力の差が大きいと言えそうです。

 しかし、公立校出身でも優秀な結果を出した受験者もおり、絶対的なことは言えません。最近、ブラジルの私立学校から公立学校の教師として転任してきた先生は、結局子どもの状態は学校の違いではなく家庭の違いに起因するとも言い切りました。

 また、他の傾向として、ブラジルの公立の初等教育機関に通う子どもや保護者、そこの教師たちも生徒たちにあまり高校受験や大学受験に意識を向けていない人も少なくありません。


日頃の成績に加え、公立校か私立校のどちらの出身か、人種、家庭の経済状況なども考慮されて合格が決定された2018年度の国立高校のリストの一部

日頃の成績に加え、公立校か私立校のどちらの出身か、人種、家庭の経済状況なども考慮されて合格が決定された2018年度の国立高校のリストの一部

 人生、学校では決まりません。それでも、学校というものが今も存在して機能しています。最低限の読み書きそろばんや知の世界の入り口に立たせてくれる門戸の一つでもあります。

 ブラジルは経済格差も大きいですが、教育や仕事への意識も、家庭によって大きな違いがあるとは言えそうです。
 
 親の経済力が子どもの学力に影響するという一般的な傾向は、ブラジルでも示されているのかもしれません。


ブラジルの各学校で貼り出された受験結果のリストを見る若者

ブラジルの各学校で貼り出された受験結果のリストを見る若者



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