巣立つ前の大仕事2015　　いつもと違う手作り卒業式　　その3

台湾：台北

小川聖市(オガワセイイチ）

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市（台湾）

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2015.07.16 up

この寸劇の進行中……

　18歳の誕生日を迎えたGalina（ガリーナ）。
　楽しかった誕生日パーティーを終え、部屋に戻り、もらったプレゼントを確認していたら、見慣れない宝箱が置かれていました。

　箱を開けたら、パズルのピースとおばあちゃんの手紙が入っていました。手紙には、かつて自分が訪れたNeverlandのこと（注：ここでは学園を指しています）が書かれていましたが、ガリーナはなぜその手紙があるのか訳が分からない状態でした。
　そして、寝ようとした時、寝室に人の気配があり、のぞきにいくと、そこには見慣れない緑の服の男の子がいて、ガリーナは取り乱してしまいます。

　落ち着きを取り戻したガリーナが男の子に色々質問します。
　男の子は、名を「ピーターパン」と言い、おばあちゃんの手紙が入ったNeverlandの地図を置いたのは自分だ、と告げ、ガリーナをNeverlandに来るよう誘いました。ガリーナは半信半疑ながらも、ピーターパンの誘いを受け、Neverlandに空を飛んでいきます。

　卒業式と寸劇は、2人がNeverlandに到着したところから始まります。

　Neverlandに到着した二人を待っていたのは、妖精の王。
　妖精の王は、大切なお客様をお迎えするためにダンスの準備をしていたと二人に話しているとき、召使いの妖精が「凱達格蘭大島（注：総統府前の大通りの『凱達格蘭大道』を指しています）の総統がいらっしゃいました」と一言。

　そこで歓声に包まれながら現れたのは……

馬英九（マー・インジョウ）総統

　馬英九総統でした。
　「大きい会社（国家）の偉大な経営者（総統）」と言えば、確かにそうなのですが……
　そして、これまで紹介して来た「卒業式にふさわしいとは言えない男性」の正体は、総統府の護衛の方々のことでした。

　馬総統は、寸劇の中に自分が入っていることをイメージできていなかったようで、周りの演技者たちの協力を仰ぎながら「はっ、はっ、はっ、（ここへ）しばらく来ていなかったが、Neverlandはやっぱり麗しい香りが漂うところだな」と台詞もうまくこなしました。

　妖精からの贈り物（上の写真参考）には、アドリブで「ありがとう、大切にするよ。絶対にネットオークションにはかけないから」と返す余裕も見せました。

祝辞スピーチを行なう馬英九総統

　ここから、馬総統の祝辞スピーチが始まりました。
　馬総統は、学校と総統府の関係を、斜め向かいの隣人同士ながら、なかなか訪問できないので、近くて遠い隣人同士と形容。続けて、「我が家の女系家族9名、祖母、母、姉3人、妹1人、妻、娘2人がこの学校の卒業生で、身近なところに緑の制服がかかっていない日はなかった」と学校と自身が緊密な関係にあることを話し、歓声を集めていました。

　その後は、卒業生たちが知らない学校の歴史と社会における役割や位置づけ、これまで卒業していった先輩たちが現在に至るまでどのような功績を残してきたかを話し、卒業生達の未来の発展の祈る形でスピーチを締めくくりました。

妖精たちのダンス

　馬英九総統のスピーチの後は、卒業式実行委員会がウェルカムダンスを披露しました。

　ダンスはしっかり決まり、凱達格蘭大島の総統は満足された様子でした。最後は楊世瑞（ヤン・シールイ）校長の呼びかけで、ダンスのメンバーと共に記念撮影に応じました。

　その際、来賓たちがつられて立ち上がって写真撮影を行なったことで、その後ろにいる台湾のカメラマンから、「前、座れよ！」という感じの怒鳴り声が聞こえました。その気持ちは分からなくもないですが、卒業式というお祝いの場で、学校関係者や馬英九総統らが力を合わせて雰囲気を作っていっただけに、そこに水を差されるような感じの光景でした。