開催まで半年を切った第２０回W杯サッカー。６月１２日から約１カ月間、ブラジルの全国各地で繰り広げられる。そのうち、リオのマラカナンで行われるのは、リーグ予選から決勝戦までの７回。リオ市観光局は期間中に２０万人の観光客が訪れると予想している。しかし、ホテルの室数は完全に不足状態。そこに奇抜な話が飛び込んできた。

ファヴェーラ（貧民街）の部屋賃貸業者が現れたというのだ。１泊１２０レアル（約５，５００円）だそう。だが、待てよ。ファヴェーラにもピンからキリまである。板切れと段ボールを張り付けたようなバラックから、煉瓦を積み上げて建てた家までさまざまだ。
泊まったとしても、治安の面は大丈夫か。警察が徹底的に守ってくれる保証はない。日本人が泊まれば狙われるだろう。また、急な坂の狭い石段を上らなければならない。これが結構きつい。水道施設は貧弱、室内灯は電線からの盗電がほとんどだ。

リオのファヴェーラは小高い丘の中腹にある。石川五右衛門のセリフに置き換えれば、「絶景かな、絶景かな。リオの宵は値１万ドルとは小せえ、小せえ。この筆者の目からは１００万ドル…」と、諸問題をよそに大パノラマの夜景を満喫できるのは確か。

ファヴェーラはサンパウロ市の郊外にもある。５年ほど前に見学した。バスケットボールのコートぐらいの広場では、子供たちがボールを蹴って遊んでいた。表情は明るい。あいさつをすれば、高齢者が窓から手を振る。モデル地区だったが、皆、いい人だった。

筆者は３０年以上ブラジルに住んで、当地の事情は多少分かっているつもり。どんなに安くても、ファヴェーラ宿泊だけは遠慮したい。

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