ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

前の月へ

2026.3

次の月へ
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31     

2012年に日本で出版された古事記の雑誌を眺めるブラジルの人々

2012年に日本で出版された古事記の雑誌を眺めるブラジルの人々

 第二次世界大戦後に日本の公教育を受けた人なら、「古事記」が奈良時代に編纂されて文書化されたことぐらいは記憶に残っているはずです。しかし、その内容となると、ヤマトタケルやイザナミ、イザナギ、アマテラスオオミカミの登場人物名くらいは聞いたことがある程度という人が一般的だと思います。

 ブラジルはキリスト教の聖典である旧約聖書と新約聖書に書かれた内容が人々の共通の思考や感覚のベースになっていることは見逃せません。そこに土着やアフリカ、その他世界各国に由来する宗教も集まって、独特のブラジル文化やブラジリアンスピリットが今も形成中といっても過言ではない印象を受けます。

 ブラジルで聖書をベースとした信仰心は形骸化していると叫ばれて久しいものの、ブラジルのポルトガル語自体が聖書やキリスト教文化から影響を受けていることは多くあります。日本とは地理的に遠く、「古事記」なんて縁遠い国…と思いきや、古事記に旧約聖書の世界を見出すキリスト教の一派があります。


旧約聖書で古事記と共通するとアレックス師が思う箇所(下線部)

旧約聖書で古事記と共通するとアレックス師が思う箇所(下線部)

 サンパウロ市内の住宅街の合間に設けられた「テンプロ・ソフィアニコ」は8畳一間ほどの小さな教会です。入り口のガラス扉には「テンプロ・ソフィアニコ」の文字の下に「フィーリョス・ド・ソル(太陽の子どもたち)」と記されているのが印象的です。
 
 この教会の師アレックスさん(38歳)は奥さんと娘さんと3人のお弟子さんに常時説法をしています。娘さんを除き、皆30代です。

 アレックス師の説法は、聖書の教えをベースにしているものの、世界中の宗教や信仰の良いものを取り入れて新しい時代の新しい思想や生き方を求めていくという事を信条としています。

 そして、アレックス師は言います。「旧約聖書の創世記で、男女が神によって創造される箇所までは、古事記と似ている」と。

 神学や宗教学に興味のある人の間では、古事記も旧約聖書も文書化されるまで長年に渡って口承で伝えられてきたことが知られていると言います。それで、旧約聖書から古事記が影響を受けたとか、古事記が旧約聖書に影響を与えたなど、様々なことも想像されています。はるか遠い昔のことで誰もどれが真実とは言えません。

 アレックス師は日本文化や神道に大変興味があり、インターネットでスペイン語で掲載されていた「古事記」を見て、ストーリーを理解したとのことです。アレックス師は、「キリスト教では天地創造後、神が男のみとなり、別に聖霊やキリストの存在がある。古事記ではイザナギとイザナミという男女の神がいて、キリスト教の聖霊がイザナミに当たる」と捉えられると直観したとも言います。


古事記と旧約聖書に共通性を見出す師が説法する「テンプロ・ソフィアニコ」

古事記と旧約聖書に共通性を見出す師が説法する「テンプロ・ソフィアニコ」

 日本人が日本以外の国で暮らしていると、時々、日本人以上に日本文化に詳しい人に出会う事があります。まさにそんな一例がアレックス師のような存在です。

 第二次世界大戦前までは日本の国語の教科書で「古事記」が学ばれたと言いますが、日本人と自負しながらブラジル人から「古事記」を説法されるようになってしまったというのも、日本を再考させられると同時に、グローバル時代の到来が既に訪れていることを物語っているかのようです。


「テンプロ・ソフィアニコ」のアレックス師

「テンプロ・ソフィアニコ」のアレックス師



レポーター「大浦 智子」の最近の記事

「ブラジル」の他の記事

  • 1374 ビュー
  • 0 コメント

0 - Comments

Add your comments

サイト内検索

Name(required)

Mail(will not be published)

Website

Archives