ブラジル

ブラジル:サンパウロ

日下野 良武(くさかの よしたけ)

◎職業;ジャーナリスト、ブラジル文化研究家
◎居住都市;サンパウロ市(ブラジル国)

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 「ブラジル日本移民の父」として日伯両国の関係者に慕われた上塚周平。熊本県出身で第一回ブラジル移民の引率者だ。彼の銅像は東洋街の一角、小さな公園の中にある。いや、あったが正しいか。どうやら台座の上の立像が盗難に遭ったらしい。


 大理石の台座の上の銅像がないという話は2021年10月ごろだった。しかし、業者が修復で持ち出したのではとの思いもあり、関係者が市の区役所など公的機関に尋ねたら「われわれは知らない」との回答で色めき立った。現在も所在が分からないままだ。

 東洋街の一角にある30メートル四方ほどの小さな公園内。入ると、中央部に池がありコンクリート製の橋下には鯉が二匹泳いでいる。銅像はリベルダーデ大通りに向かって立っていた。同大通りには鈴蘭灯が並び夜には一帯を照らす。


 長年、同地区でお土産品店を経営していた尾西貞夫さん(79)は、「無くなったのであれば残念。日本移民全体の悲しみです」と、声に力がない。

 また、ブラジル熊本県文化交流協会会長の清原健児さん(76)は、「このところコロナ禍で生活困窮者が多い。盗まれたのでしょうね」と話す。

 リベルダーデ文化福祉協会会長で、東洋街のホテル経営者の池崎博文さん(91)は高齢ながら今も元気がいい。「しょうがないねぇ」と、短いコメント。



 近年、ブラジルは貧富の差が激しく治安が悪い。盗品の売買も盛んですでに処分されているかもしれない。区役所職員は知らないし、もし日系社会の誰かが補修などで関係していたらすぐ分かる。盗まれたと考えていいだろう。

 ブラジルで紛失したものが戻ってくることはまずない。住民と警察が一体になった盗難防止対策がないのだ。建設費用はさておき、記念碑建立では銅像より石像のほうがいいか。東大卒で清貧に甘んじてブラジルで生涯を終えた上塚周平に今、手を合わせたい。



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