ブラジル

ブラジル:サンパウロ

日下野 良武(くさかの よしたけ)

◎職業;ジャーナリスト、ブラジル文化研究家
◎居住都市;サンパウロ市(ブラジル国)

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ブラジルの日系人家族はふれあいの絆を大切にする(ある日系人の誕生お祝い会で)

ブラジルの日系人家族はふれあいの絆を大切にする(ある日系人の誕生お祝い会で)

 サンパウロ市に永住して34年がたつ。所用で毎年訪日するが、不惑の年寸前まで暮らした日本を忘れることはない。最近、母国を訪問するたびに日本文化の移り変わりや言葉の乱れを心配している。1400年を超える歴史ある文化は将来どうなるのか。


 日本は平均的教育程度が高く、国民は法をしっかり守り、街頭にごみや落書きがなく治安も良い。しかし、人間関係で感じることがある。サンパウロ市内の地下鉄内で青年が高齢者や体の不自由な人に席を譲るのに、東京の朝夕の通勤電車内では寝たふり、知らんふり。また、家庭での家族の絆は弱まるばかり。ブラジルでは祖父母の誕生祝いや、毎年クリスマス休暇から年始までの一家勢揃いは常識だ。


 近年、英語の氾濫で含蓄のある日本語が消えている。会合で「トーク」、「メリット」、「ビヘービア」などが飛び交う。トークは「語らい」、メリットは「価値、利点」、ビヘービアは「振る舞い、態度」。こんな響きの良い語句があるのになぜ?と問いたい。情趣や示唆に富む語彙があるからこそ人は行動、動作を起こす。「もったいない」がいい例だろう。


ある日系人の別荘で行われた家族懇親会

ある日系人の別荘で行われた家族懇親会

 さらに、アカハラ、パワハラに就活・婚活の凝縮新語、若者の「話す」「見れる」「来れる」「食べれる」の「ら」抜き言葉の連発には、思わずつんのめりそうになる。


 当地訪問の日本人が老移民とその子孫を見て、家族への思いやりを大切にする姿や「さじ(スプーン)」、「白ご飯(ライス)」などの言葉を使うのに古い日本を感じた、という。“古い”のではなく、日本が他国文化の影響を受けて“変わった”のではないか。国籍や言葉は違っても親の教えを受け継ぎ、国外で日本文化を純朴に守ってきたブラジルの日系人。無言で教えられたような気がする。
 日本古来の雅やかな伝統、文化、風習を今一度見直したい。
 


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