メキシコ

メキシコ:グアダラハラ

龍崎 節子(りゅうざき せつこ)

職業…民芸品輸出、撮影コーディネート、通訳翻訳
居住都市…グアダラハラ(メキシコ・ハリスコ州)

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 メキシコには100年ほど前の革命時代に、プロパガンダの一環として文字を読めない人たちにも思いを伝えようと「壁画運動」というものが起こり、各地に巨大な壁画が芸術の巨匠達の手によって残されています。

 力強く革命を戦い抜く意思を描いたもの、地方の悲惨な状態や戦場の光景など、生々しいものや恐ろしい描写もあります。

 ですが、芸術という直接人々の心に作者の思いを訴えかける手法は今日のメキシコにもしっかりと残っています。


ぱっと明るい気持ちになれる壁画

ぱっと明るい気持ちになれる壁画

 グアダラハラにある州で一番大きな児童養護施設の壁に昨年春、こちらも巨大な壁画が登場しました。

 壁画やグラフィックアートを手がける市内在住のアーティスト オスカル・オリバレスさんは、友人に連れられて訪れたこの施設で、どうにか子ども達にもっと心豊かに過ごしてもらえないかと考え、施設内の壁に壁画を描くことを提案しました。
 


無機質な施設の建物にすこしでも彩りを

無機質な施設の建物にすこしでも彩りを

 乳幼児達の遊び場としてフェンスで区切られている一角にある高さ15m、横幅60mの巨大な壁。こちらに、オスカルさんは奥さんと友人の力を借りて描いて行きます。製作に携わった人数、たったの4人。下絵をプロジェクターで投影して描く手法ではありますが、なんと驚異的な15日間でこの壁画を仕上げてしまいました。

 描かれているのは、幾何学模様にデフォルメされた色とりどりのお花と蝶、元気に遊ぶ子ども達と女の赤ちゃん。
 この赤ちゃんはオスカルさんの娘マグノリアちゃんの1才当時の姿で、他の「遊ぶ子ども達」の姿もなんだかなつかしい感じがします。
 
 よく見ると、子ども達はゲームや道具、おもちゃを使っていません。人と人がつながり、太陽と自然のもとで遊んでいます。いわゆるアラフォーのオスカルさんの子ども時代の光景です。

 「子ども達はなんの”モノ”が無くたって楽しく遊べるんだよ」と、今の子ども達の姿をすこし心配しているようでもありました。


作者のオスカルさんと、マグノリアちゃんの絵

作者のオスカルさんと、マグノリアちゃんの絵

 いろいろな事情で親元で生活ができずにここに送られて来た0才から18才までの子ども達500人が暮らすこの施設。州の運営ではありますが地元からの援助も数多く、とはいえ子ども達が一番欲しい「親からの愛」はどうにもなりません。「ここにいる子ども達が大人になった時に思い出すここの光景が少しでも明るい物であるように。今彼らが包まれるここの光景が色鮮やかで楽しい物になるように」との思いで、オスカルさんはこの作品を無償で提供しました。

 児童養護施設の中ですので一般公開はされていないのですが、でもここに暮らしている子ども達が毎日この壁画に囲まれているんだと思うと、ほっとします。


こんな広場で遊べたら楽しい思い出沢山できるね

こんな広場で遊べたら楽しい思い出沢山できるね

 


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