清潔なカナダの病院
「今すぐ日本に帰って治療したら?」
私に卵巣がんの診断が下りたときの日本人の友人たちのアドバイスだ。
彼らが日本での治療を勧めた一番の理由は、カナダでの医療にかかる待ち時間だ。「私の友人は家庭医に調子が悪いのを訴えてから、検査まで6か月待った」「××さんは、手術を3か月待っている間に腫瘍が巨大化してしまった」などなど。家庭医へのアポイントメントは簡単に取れるものの、専門医や手術、検査のアポイントメントに時間がかかるのがカナダでの常識だ。
がんと言えば、早期発見、早期治療がカギ。「カナダの医者に任せていると手遅れになりかねない」と日本人の友人たち。それでも私はカナダでの治療を選んだ。なぜなら、私に限っては、迅速に治療をしてもらえたからだ。
私が最初に家庭医を訪れたのは12月13日。10月の半ばごろからお腹が大きくなっていて太ったのかと思っていたら、あっという間に妊婦のような腹部になってしまった。仕事が忙しく、なかなか家庭医のところに行けなかったのだが、年が暮れるまでになんとかしなきゃと、やっと時間を捻出した。
私が腹部を見せると医師の顔色が変わった。CT検査をすぐに受けるべきで、検査機関に依頼して、すぐに予約ができないようなら救急外来に行くようアドバイスされた。
医師の予想どおり、正規ルートだと至急でもCT検査は2月というので救急外来へ。かなり待たされたものの、その日中にCTまでこぎつけ、さらに手術も12月31日で決定。約2週間で手術まで終了した。
家庭医の初診から手術が終わって退院するまで、私が支払った医療費は手術前に飲まされた下剤の費用のみ。カナダでは国民皆医療制度を採用していて、処方箋薬、歯科などを除く医療費は基本的に無料だからだ。下剤は病院で使用していたら無料だったが、あいにく自宅で服用したので私持ち。ただし、仕事の保険でカバーされた。
自分の闘病経験から、日本人の知人たちに「カナダの医療も悪くないよ。私は2週間ほどで手術してもらえたよ」と言っている。私の母も10年ほど前に11月の終わりに体調不良を訴えて近くのクリニックに行った。その後、総合病院に送られたが、年末ということで、検査が始まったのは1月半ば近く。やはりがんで、結局、亡くなったことを思うと、悪くないどころか優秀な気もする。
「でも、それはKeikoが早く診てほしいと医師にちゃんと頼める英語力があったからじゃない」
特に早急な治療を頼んだ記憶はないが、実際、カナダにいる多くの日本人が医療にかかる待ち時間の長さに辟易しているのも確かだ。かく言う私も先日、父が大腸がんをしているので、私も念のため検査をしてほしいと頼んだところ、検査の予定は1年後。私の経験では、緊急性が認められない医療処置は驚くほど時間がかかる。
治療費が無料で、かつ医療保険財政も比較的健全なカナダ。待ち時間が長くても仕方がないと思う。100%完璧なシステムなどないのだから。
ただ、今、思い出しても、巨大化した腫瘍を取るのに20センチほどお腹を切ったのに、退院は3日後だったのはきつかった。もう少し、入院させていてほしいと頼んだら、置いてくれたのだろうか。
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